岡本太郎と言えば万博の太陽の塔だ。縄文土器の美を発見した岡本太郎が現代美術と縄文を合体させた巨大な作品だ。だが、これのどこがいいのだろう。
岡本太郎の油彩は初期から晩年まで似ている。制作態度が終始一貫していたのだと人は思う。針生一郎さんによれば、岡本は古い作品も常に手を入れていた、だから皆似ているのだ。
私が岡本太郎で一番いいと思う作品は「痛ましき腕」だ。シュールレアリズムのなかなか優れた作品だ。しかし、これは再制作だ。戦後大きな展覧会に招待された時岡本は病気で寝込んでいた。そこで、池田龍雄さんらに頼んで、戦前パリで描いてフランスに残してきた「痛ましき腕」の小さなモノクロ写真から大きなキャンバスに輪郭だけ起こしてもらい、それに岡本が着色したのが現在残っているものだという。小さな写真に升目を引き、そこから大きなキャンバスに拡大したのだと池田さんが話してくれた。彦坂尚嘉さんによると、岡本の絵は何度も塗り込んで描くのに、「痛ましき腕」は枠の中をきれいに塗ったようで、見て違和感があったと言う。
岡本太郎。個人美術館まであるが、私見ではそんなに優れた画家ではない。
(写真は「痛ましき腕」)