東京上野の東京都美術館で岡本太郎展が開かれている(12月23日まで)。美術館の地下、1階、2階の3つのスペースを使って、絵画と立体150点以上の作品が展示されている。チケットは日時指定の前売券が主で、私もネットで予約して見に行った。
思ったほど混んではいなかったが、大量の岡本太郎が見られた。今までも岡本太郎美術館や、岡本太郎展は何度か見ているが、これだけまとめて見たのは初めてだった。
岡本太郎の作品について、絵画と立体を分けて紹介する
まず絵画のつまらなさに改めて驚いた。ここまでひどいとは思わなかった。色彩感覚も良くないし造形的にも見るべきものがない。中では「痛ましき腕」が良い方の部類に入ると思うが、キャプションにはこれが再制作だということは書かれていなかった。この絵の下絵をトレースしたのは池田龍雄氏で、戦前岡本太郎が描いた作品の小さな白黒写真に升目を引いて拡大したと池田氏が語っていた。岡本はそれに着彩したのだった。再制作のため、他の作品のように何度も塗り重ねることがなく、岡本作品としてはすっきりしている。
次に立体作品もたくさん並んでいた。立体作品をこれだけまとめて見たのも初めてだった。立体作品もつまらなかった。空間構成をどこまで考えていたのだろう。岡本は本来平面の作家だと思えば、立体の空間構成が弱いのも不思議ではないが、その割に立体の作品数が多いのは大阪万博の「太陽の塔」の成功体験からだろうか。
一言で言って岡本太郎の作品は絵画も立体も無残だった。なぜこんな2流の作品しか制作しなかった作家がこんなに人気があるのだろう。恐らく大阪万博で「太陽の塔」を展示したことが第1の理由だろう。大坂万博は日本国民の半分が見に行ったという。その会場にそびえたつコケシのお化けのような「太陽の塔」は印象に残っただろう。第2の理由は岡本太郎がサントリーのテレビCMに登場して「芸術は爆発だ」と無意味なことを叫んだことだ。これは日本中の視聴者が何度も何度も目にさせられた。
万博とテレビCMによって岡本太郎は超有名人になった。作品の良し悪しは誰も分からない。観客はみな超有名な岡本太郎の芸術作品とやらを見に行ったのだ。ほとんどパンダを見物に行くのと変わらないだろう。
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岡本太郎展
2022年10月18日(火)―12月28日(水)
9:30-17:30(月曜休廊)
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東京都台東区上野公園8-36
ハローダイヤル050-5541-8600