STEPSギャラリーの前田精史展を見る

 東京銀座のSTEPSギャラリーで前田精史展が開かれている(11月17日まで)。前田は1948年京都市生まれ、1974年に東京藝術大学大学院美術研究科を修了している。同年ときわ画廊で初個展、以来さまざまな画廊で個展を繰り返している。
 画廊主の吉岡が自身のブログに前田の個展を紹介しているので、それを引用する。吉岡は前田の彫刻作品が徐々に変化していると言い、それを「物語」だという。

「種まき器」
鉄の板に金属のパイプが埋め込まれていて、そのひとつに、ビニールパイプがつながれている。どうやって種をまくつもりなのだろうか。ここにはすでに物語が発生している。

「欲望」
鉄板の抽象彫刻の上に貝殻と樹皮が取り付けられる。
具体物の登場である。この貝殻と樹皮は、純粋に形や色が面白いから付けてみたのではないことは見るだけでわかるだろう。これは造形であり、言葉でもある。言葉は饒舌であり、すぐさまシュールレアリスティックな物語をつむぎ出すのである。
冷たい静謐な金属抽象彫刻を作る作家と思われていた前田の、奥に(裏に)隠れていた情念が滲み出してきているのかもしれない。


「Rebirth」
これはあきらかに樹木のイメージを形にしたもので、小さな葉っぱまで付いている。有機的な形がわれわれの眼を惹きつける。



 次に壁面に「葉・葉・葉」と題した小品が並べられている。アルミ製のまさに葉だ。
 また事務室にも同じような小品が50点置かれている。こちらはアルミ製と銅製だ。

こうやって並べると涼やかであるが、制作の方法を聞くと、かなりハードな仕事であるらしい。アルミと銅の棒を叩いて葉のような形に成形するわけだが、鉄床の上でハンマーを振り下ろしながら一日中叩いていると、腕がパンパンに腫れあがるそうである。一日がんばって3点が限界だそうである。
作品の上の物語を読むのも楽しいが、前田の個人的な物語も含めると、さらに味わい深い。

 これらの葉型の小品はアルミ製が10,000円、銅製が12,000円だ。1点1点を叩き出して作っているので厳密には同じものはない。机上に飾るのに手ごろな作品ではないだろうか。
 画廊主吉岡まさみのブログ
http://stepsgallery.cocolog-nifty.com/
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前田精史展「memories」
2018年11月5日(月)−11月17日(土)
12:00−19:00(最終日17:00まで)日曜休廊
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Steps Gallery(ステップス・ギャラリー)
東京都中央区銀座4-4-13 琉映ビル5F
電話 03-6228-6195
http://www.stepsgallery.org
東京メトロ銀座駅B1・B2出口より徒歩1分