40年以上探していた恵口烝明詩集『衛星都市の彼方で』(他人の街社)を入手した。たまたまネットで検索したら神保町の古本屋に在庫があるということで、早速に購入してきた。
この詩集は50年近く前に友人が阿佐ヶ谷の古本屋で見つけたもので、私はそのコピーを取らせてもらった。奥付をみると1969年7月1日発行、編集と発行者が支路遺耕治となっている。恵口は1946年生まれ、1994年に肝臓がんで東京で亡くなったという。
私も1部欲しくて1970年に恵口に手紙を書いたが、もう1部も残ってないとのていねいな手紙をもらった。友人の入手したものは扉に金井美恵子あての献辞が書かれていた。おそらく恵口が金井に献呈し、金井が処分したものだろう。
詩集からその一部を紹介する。代表作「チベベの唄」は9連196行、補足が3連45行という長詩。
チベベの唄(抜粋)
厳粛な性器を所有している少女
便秘のペニスをにぎりしめて叫ぶアーケードのように巨大な野良犬の肛門よりもきたならしい性器を所有している少女
決してしとやかな性器を所有して
敷石のはるか下側にぬくもりきらない排泄物を点検しながら重々しい雨に陰毛だけは濡れねずみの男根のように腐蝕さすことのできる性器を所有している少女
確実に匂ってくる性器のような性器を所有して
ああ少女
少女チベベ
なおもなおもチベベ
ぼくらは汽車にのって出発しなかったが
ドヤ街の便所よりも立派な建物の横で性交したし地下街の喫茶店では氷屋のノコギリよりもあたたかい性交をしつづけていた
チベベ
なあに
ぼくはチベベの性器に
あなたは私の性器に
なあに
ぼくはチベベの性器に男根のような
あなたは私の性器に男根のような
なあに
ぼくはチベベの性器に男根のような唄をうまくうたうことが
どうしたの
できるだろうか
それはできないわ
(後略)
発行された1969年から49年が経っている。当時入手した人たちが高齢で亡くなったりしているのだろう。それで遺族が市場に出したりしているのに違いない。忘れられてしまうのは惜しい詩人だ。