紳助を糾弾する佐野眞一

 筑摩書房のPR誌「ちくま」10月号に掲載されている佐野眞一の連載エッセイ「テレビ幻魔館」の今月のタイトルは「紳助引退と新総理」だ。野田新総理の件はさておいて、紳助に対しては容赦ない。

 ヤクザとの交友メールがばれて芸能界を引退せざるを得なくなった紳助に対し、「すごい話術の持ち主」「彼に代わる司会者はいない」と言って惜しむ声があるようだが、紳助は自分の言うことを聞く売れない芸人を使って番組を私物化するチンピラでしかない。彼ら三流芸人の紳助に対するおべんちゃらの気色悪さといったら。
 紳助のあの落ち着きのないちんこい目や、将来を考えて何軒も飲食店を経営する気の小ささを考えただけでも、この男が後世に名を残すお笑い芸人になれるとはとても思えない。
 週刊誌はこの話題に飛びついて大特集を組み、紳助とヤクザのズブズブの関係を鬼の首を取ったように報じた。でも、そんなこと初めからわかっていたじゃないか。紳助はお笑いの世界を小器用に渡ってきただけのヤンキーである。人間はそんなに変わりゃしない。
 紳助が時折り凄んで見せるヤクザオーラも、器量の小ささを感じさせて痛々しいだけだった。紳助に真人間に戻れとは言わない。これから千年生きても使えないほどの大金を稼いだのだから、悪いことは言わない、一刻も早く人様の前から消えることである。
 紳助は自分の代わりの芸人はいないだろうくらいに思っているかもしれないが、お生憎様、紳助の代わりは銭ゲバの吉本が明日にでも見つけてくる。それが分からないなら、紳助は本当にヤキが回った。

 何という厳しい意見だろう。でも間違ったことは一つも言っていないと思う。佐野眞一、今まで読んで傑作だったと思うのは、「カリスマ」「阿片王」「甘粕正彦 乱心の曠野」「東電OL殺人事件」「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史」などだろうか。ノンフィクション作家としては立花隆より佐野を評価する。