28年目の祥月命日

 今日7月15日は山本弘の28回目の祥月命日だ。山本弘は今日が6月15日のつもりで1か月間違えて亡くなった。6月15日は誕生日なのだ。
 もう18年前になるが、山本弘未亡人愛子さんから相談を受けた。飯田市美術博物館から弘さんの絵の寄贈を求められている。すべて無料だというけれど、どうしたらいい? 寄贈してくださいとアドバイスした。当時愛子さんはお父さんが何かで大きな借金をつくり、実家が人手に渡って、その実家に置いてあったたくさんの弘さんの遺作の収蔵に困っていた。あとで聞くと、美術館でもその情報を耳にしていて、収蔵場所に困っている今なら無料で寄贈してもらえると考えたという。愛子さんは美術館の求めに応じて44点を寄贈した。ことに100号の作品はこの時すべて美術館に収蔵された。
 私は山本弘の作品が世に出る前に破損したり、火事にあったりして消滅してしまうことを恐れていた。たとえ無料でも公立美術館に収蔵されるのは良い機会だと考えたのだ。
 山本弘を評価して大量に収蔵することを企画したのは当時の美術館長の井上正さんだったらしい。愛子さんによれば毎年個展を開催しますと言われたという。しかし実際は翌年の新収蔵品展に13点が展示され、その数年後に須田剋太山本弘展として十数点が展示されただけだった。それ以後は2年に1回企画される「郷土の洋画家たち」にわずか1点が展示されるに過ぎない。
 井上さんはいわば名誉館長で、勤務している奈良の大学から月に1回通っているだけだった。実質的に美術館を運営しているのは行政から派遣されている人ではないか。以前その人にぜひ個展を企画してほしいと希望を述べたが、美術館は市民の税金で運営されている、山本さんの個展に税金を使ったら市民が納得しないだろう。なんであんなアル中の酔っぱらいのために税金を使わなければならないのか。
 館長は現在創画会の滝沢具幸さんに替わった。滝沢さんはさらに関心を示さないだろう。あのような珠玉の作品群が20年近く死蔵されているというのはきわめて残念なことだ。先日のギャラリーゴトウでの10号以下の小品展でもあんなに多くの方々の感動を呼んだのに。
 寄贈した絵のために飯田市は愛子さんに市長との昼食会を開いてくれた。どんな料理でしたか? 市役所の応接室で市長と二人で店屋物を食べただけよ。