ティファニーはアールデコ

 私がティファニーについて語るなど噴飯物に思われるかも知れないが、微かな接点はあった。いや大したことではないが。オードリー・ヘップバーンの映画「ティファニーで朝食を」で有名な高級宝石店ティファニーが東京日本橋三越に出店したのが1972年だそうだ。その3,4年後に私は当時付き合っていたカミさんにティファニーの指輪をプレゼントしたのだ。銀のハート型をしてその真ん中に穴が開いているやつ。3,000円だった。今でいえば15,000円くらいか。ティファニーもまだ安いものを揃えていた。当時彼女のおしゃれな弟はティファニーの銀のキーフォルダーを持っていた。その銀の指輪は彼女が家事をする中で傷だらけになってしまった。
 その数年後に今度はやはり歪んだハートの大きな金のペンダントをプレゼントした。これは高かった。ティファニーのデザインはみな歪んでいる。ハートも例外ではない。もしかしたらと思っていた。
 書名は忘れたが、アールデコについて書かれた本に、何人かの作家の名前が列挙されていたが、その中にティファニーという名前を見つけた。確証はないが、宝石店を創立したティファニーと同一人物に違いない。ティファニーの歪んだデザインはアールデコそのものだ。おそらくアールデコの作家が宝石店を始めて成功したのだろう。
 アールデコといえば、銀座5丁目のファッションビル、メルサのエレベーター内の手すりはまぎれもなくアールデコのデザインだ。ちなみにこのおしゃれなメルサというビルの正式名称は中村積善会ビルというちっともおしゃれじゃない名前だ。
 銀座には2丁目にメルサGINZA-2がある。正式名は銀座貿易ビル、ここは40年前はヤングクインビーというキャバレーだった。毎晩アメリカ兵がバスで大勢やってきていた。まだ1ドルが360円だった時代だ。
 写真はメルサのエレベーター内のアールデコの手すり