山本弘の作品解説(115)「河原道」

山本弘「河原道」、油彩、F10号(天地53.0cm×左右45.7cm)

 

 1976年制作。河原の真ん中に1本の道があり、その先に遠く山がそびえている。道は真っ直ぐ山に向かって伸びており、道の途中に1頭の黒い犬が立っている。山本はしばしば三叉路やT字路を描いているが、また一本道も何度も採り上げるテーマだ。これはT字路と一本道を合わせたような造形になっている。

 三叉路には猫が座っていたりするが、道の途中に立っている犬というのは他に見たことがない。犬はおそらく何かを含意しているのだろう。やはり画家自身だろうか。

 遠い山に向かって道が一本続いている。犬は立っているのではなく、足を踏ん張って何かに吠えているのかもしれない。誰も通らない道に向って。

 左下に控えめに「弘」とサインされている。派手な色彩は使われていないが、複雑に色が塗り重ねられ、山本特有の渋い華やかさを提示している。