山内薫『本と人をつなぐ図書館員』(読書工房)を読む。山内は東京都墨田区立図書館に40年以上勤務し、一貫して障害者サービス、子どもへのサービスを担当してきた。本書出版の頃は、高齢者や知的障害者へのサービスを積極的に行っている、と略歴にある。
肢体不自由児にカセットテープに録音された物語を届ける。視力のない男の子に『さわる絵本』を紹介する。彼は点字図書を読むことを憶えて、その後盲学校高等部を経て大学に入学し、点字受験によって地方公務員になった。
特別養護老人ホームのお年寄りに本の貸出を行い、紙芝居も始めた。『鞍馬天狗』を上演したとき、それまで紙芝居に対して無関心だったような男性が、身を乗り出して見てくれた。
山内は千葉刑務所にも見学に行っている。受刑者たちの読書環境を知るためだ。独居房はほぼ2畳の畳とその奥に高さ60センチほどの白い板があり、板の向こうに洋式便所があった。雑居房は10畳ほどの部屋に6~7人が入るようになっており、やはり板の奥に水洗トイレがあり、部屋の中央窓際にテレビが1台置かれている。雑居房では余暇時間にテレビを集団で見るため、一人本を読むことは、他の受刑者との協調上、非情に難しいという。私も刑務所(特に雑居房)に入らないよう気をつけよう。
世の中には様々な障害者がいて、彼らにサービスを行っている山内のような優れた図書館員がいることを知った。最近の図書館は効率優先で、業務を外部の企業に委託している例が多い。そのような風潮を見直すべきではないかと感じたのだった。
なお、著者の山内薫は、以前ここで紹介した詩人、『クルミ』の作者と同一人物だ。
「クルミ」の詩
https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/2021/05/07/124727