なぜ精力剤が飲まれるのか


 これは「凄十(すごじゅう)」という名の精力剤の新聞広告だ。左端の魅力的な若い女性が「彼、どうやらのんだらしい」と言っている。船員らしい「彼」が手にドリンク瓶を持ち、体中からエネルギーらしきものが迸っている。海中に人魚が浮かんでいて、遠い灯台を見つめている。彼女の眼からはハートマークが漂っている。その灯台は斜め45度に大きく膨れ上がり、先端が巨大な様相を呈している。人魚はそれを見ているらしい。灯台の先端からは稲妻のようなものが出ており、それが船員の体に届いている。村上隆の立体作品ロンサムカーボーイで見たものによく似ている。「凄十」を飲んだ結果、大きくなった灯台を類推させるような変化が船員に起こったと言いたいようなのだ。画面の右端には中に「STAND UP!」と書かれた上向きの矢印が3コ立っている。この辺はサブリミナル効果を狙っているのかもしれない。
 なぜ、衰え始めた男たちが精力剤を飲みたがるのか。その答えは日本刀と鞘の関係から知ることができるだろう。日本刀はよく切れる。それを鞘に収めないで抜き身で持ち歩いたら危険極まりない。始終あちこちでケガをさせることだろう。だから使わないとき日本刀は鞘に収めておくのだ。しかしその日本刀が鞘から出なくなったらどうなるのか。切りたいときに切れなくなる。日本刀は鞘から出せなければ切ることができない。
 精力剤は鞘から出にくくなった日本刀を、再び出すことができるようになると期待されているものなのだ。実際にそのような効果があるのか、知人のTさんの体験を聞いてみた。あるよ、と話してくれた。凄十ではなかったようだが。中国由来の何とかという媚薬や、有名なバイアグラを試した結果は、どんなに切っても刀が鞘に収まらなくて困ったとのことだった。
 いや残念ながら私は試したことがない。バイアグラもリアップ(養毛剤)も心臓の治療薬から開発された経緯があり、心臓に障害がある者は使ってはいけないと注意書きがあるようなのだ。

宝仙堂の凄十 龍の雫 50ml

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