目黒区美術館の中村直人展を見る

 東京目黒の目黒区美術館中村直人展が開かれている(9月3日まで)。中村は1905年長野県神川村(現・上田市)生まれ。彫刻家を志し、1936年日本美術院同人に推挙される。真珠湾攻撃戦役《九軍神》像制作、のちに東郷神社に奉納される。戦後、戦争協力者に対する糾弾が高まり、藤田嗣治と親交を深め、1952年藤田を頼ってパリへ出国する。パリではホテルで床を汚すことを避けて、油彩でなくグアッシュ(不透明水彩)で絵を描き成功する。



 彫刻作品も並んでいたが、中村の彫刻作品は特に優れたものとは思えなかった。絵画作品は藤田嗣治の影響を受けたような女の白い肌を美しく描いた作品が目立った。中村はグアッシュで描いては紙を丸め、その上からまた絵具を塗り重ねていき、わざとひび割れを起こして下の色を覗かせるという独自の技法を編み出したという。

 パリで成功したとあるように、東洋趣味的な作風を採用し、目の細い日本人を描いたり、装飾的な作品を描いている。

 私は1968年の長野県信濃美術館での中村直人展を見ている。今回55年ぶりに見ることができた。当時私は20歳、初めて美術館で観た絵画展だった。

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中村直人展「モニュメンタル/オリエンタル」

2023年7月15日(土)―9月3日(日)

10:00-18:00、月曜日休館

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目黒区美術館

東京都毛黒く目黒2-4-36

電話03-3714-1201

https://www.mmat.jp