東京京橋のギャラリー川船の『8月15日「光と影の展示会」』を見る(8月18日まで)。本展はキャバレーハリウッドのオーナーであり、美術コレクターとしても『芸術新潮』の連載エッセイストとしても著名な福富太郎氏のコレクションから、戦中戦後を画いた作品を選んで展示したもの。『週刊読書人』8月9日号に福富の書いたエッセイが掲載されている。
戦争前後の雰囲気をもつ作品に出会うとつい手が伸びてしまう。「一つの時代の芸術」として戦争画を蒐集する中で、ふと、戦争の悲惨さ、そして銃後の守りや庶民の苦しみ、惨めさなどを感じさせる作品こそ戦争の側面を伝えるものであると、気がついた。
そこで、年寄りや子供、婦人の悲惨な体験を決して洩らすまいと、他人があまり気に留めていなかった銃後の絵や、戦後の混乱期の上野界隈の写真、地下道で眠る戦災孤児のデッサンなども、コレクションに加えるようにした。
私の手元には藤田嗣治が描いた千人針を縫う婦女子の絵、北川民次の描いた出征軍人の絵などがある。どちらも戦争に行きたくない、行かせたくないという市井の人々の本心が、表情や画面に現れているように思う。今回は、そのような一般に流布されていない、いわば「勇ましくない」絵を中心にご覧頂きたいと思っている。(後略)
展覧会の主旨はここに尽くされている。会期はわずか4日間だけだが、多くの人に見てほしい。
北川民次「出征兵士」
吉田遠志「兵庫県相生造船所」
作者不明「樺太国境線」
中村研一「蒋介石」
新海覚雄「米軍進駐」
藤田嗣治「靖国の春」
藤田嗣治「兵士」
佐藤照雄「上野地下道」
新海覚雄「戦後スケッチ帖」
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『8月15日「光と影の展示会」』
2013年8月15日(木)−8月18日(日)
11:00−19:00
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ギャラリー川船
東京都中央区京橋3-3-4 フジビルB1
電話03-3245-8600
http://www.kawafune.jp/
新しくできた東京スクエアガーデンの南側の道路を隔てた向かい側
地下鉄銀座線京橋駅3番出口から徒歩3分ほど