東京浅草橋のアートラボ・トーキョーで柳井嗣雄展「遺物」シリーズ―Fiber Drawing-が開かれている(11月2日まで)。柳井は1953年山口県萩市生まれ、1977年に創形美術学校版画科を卒業している。1980年にギャラリー21で初個展、以来個展を多数回開いている。数々のグループ展にも出品し、海外でも何度も発表している。私も2001年のギャラリーゴトウや2009年のギャラリーヴィヴァン、2015年のいりや画廊の個展を見てきた。(今年の宇フォーラムでの個展は見逃した)。
制作について、画廊のホームページに柳井が書いている。
《遺物》(世紀末版)は、20世紀の終わり(1997年から1999年の間)に制作した20体の頭像のシリーズです。20世紀中に亡くなった、私にとって重要な人物(ジョン・レノン、マザーテレサ、アンディ・ウォーホール、三島由紀夫など)で構成された一組の作品として世紀末(2000年)に発表しました。太古の地層から発掘されたように、穴だらけで色あせたその巨大な頭たちは、金網の上に紙の繊維を漉き絡めて成型し、その後、一ヶ月天日干しされ自然の力で完成した作品でした。
今回展示する《遺物》(平成版)は、昨年から平成という時代が終わる今年(2019年)にかけて制作したその平面バージョン20点です。黒く染めた紙原料を流しながら紙漉き工程の中で描いていく。個人的な手わざを出来るだけ消し去るために、落水という技法で上から水滴を落とし小さなドットのような穴を開ける。最後にバックとなる白い楮の和紙原料を全体に流し込む。板張りして2日間天日乾燥する。このような作画工程は私の35年間の紙漉き経験の中から生まれた技法で、“ Fiber Drawing ” と名付けてみました。
図像は版画のように反転して現れますが、始めからそれを計算に入れながらリアルに描いていかなければいけない極めてアナロク的な作業です。穴を無数に開けて主観的イメージを物理的にあいまいにし、薄れいく記憶をかろうじて留めるやり方は立体の「遺物」シリーズの場合と同じ。拡大して見ると紙も図像そのものも植物繊維の集合(和紙)で出来ているのが見て取れるはずです。
ウォーホル、ガンジー
アインシュタイン
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柳井嗣雄展「遺物」シリーズ―Fiber Drawing-
2019年10月21日(月)-11月2日(土)
15:00-20:00(最終日18:00まで)
28日(月)休廊
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アートラボ・トーキョー/アキバ
電話03-5839-2985
東京都台東区浅草橋4-5-2 第2片桐ビル1F
https://artlab-tokyo.com/
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