須藤靖の予想する50年後の世界

 東大出版会のPR誌『UP』3月号に、須藤靖のエッセイ「五〇年後の世界」が載っている。シリーズのタイトルが「注文(ちゅうぶん)の多い雑文 その41」となっている。年に数回掲載されていて41回なのだから、10年間くらい連載がつづいているのだろう。人気のほどがうかがえる。
 須藤は宇宙論太陽系外惑星が専門の東大教授で、エッセイの本文は結構真面目なのだが、末尾に付されたたくさんの注がおかしいのだ。タイトルの「注文の多い雑文」はそのことを意味している。
 須藤によると、ロシア出身のITベンチャー投資家ユーリ・ミルナーが中心となって、太陽から最も近い恒星プロキシマへ超ミニ探査機を送る計画が2015年に発足している。メチャクチャ面白いにも関わらず極度に成功確率が低い課題に、国民の税金から多額の研究費をつぎ込むことにはかなり問題があるので、大富豪の登場となる。
ミルナーベンチャー企業への投資で現在35億ドル(約4,000億円)の総資産を持っているらしい。その資産を活用して財団を設立し、ブレイクスルー賞を創立した。それは、基礎物理学、生命科学、数学の3部門に対して、それぞれ毎年総額300万ドルが授与されるというもので、これはノーベル賞の賞金の約3倍になる。
ミルナーの計画するブレイクスルー・スターショット計画が実現すれば、プロキシマを撮影した観測データが、ほぼ50年後に見られることになる。須藤は50年後の結果を確認するのは自分には無理だが、50年後の世界がどうなっているのかについての、須藤の思いつく可能性を次のように列挙している。

・自動翻訳の普及で学校教育から外国語が消滅
・過疎化により高知県が消滅し四国県に統合
・ゲノム編集や再生医療の進展による不老不死の実現
・労働の完全機械化
・脳とコンピュータの完全接続
・AIによる人間の支配
・台風や地震などの天災の制圧
・某国間の核戦争勃発による日本の壊滅
・核戦争や致死的ウイルスによる人類絶滅
ホモサピエンスに代わる新人類の台頭
・人工生命の完成
・地球外知的生命との遭遇

 「高知県が消滅し」と言っているのは、高知県が須藤の故郷で、この予言を語った会場が高知県だったかららしい。今回、注にT嬢が出てきた。今まで須藤のエッセイを読んだ経験から、彼女は東大出版会の美人編集者であると類推する。その根拠は過去このブログに書いている。