アートギャラリー環の野津晋也展「浮かぬ水」を見る

 東京神田のアートギャラリー環で野津晋也展「浮かぬ水」が開かれている(7月2日まで)。開廊40周年記念企画IIIと銘打たれている。画廊として力が入っている企画だ。
 野津は1969年島根県松江市生まれ、1992年に鳥取大学農学部を卒業した。さらに2000年に東京芸術大学美術学部油画専攻を卒業し、2002年に同じく東京芸術大学大学院油画専攻を修了している。ユニークな経歴だ。今までにアートギャラリー環や表参道のMUSEE Fなどで個展を行っている。
 野津は最近あまり見かけなくなったシュールレアリスム系の画家だ。とくに石田徹也が亡くなったあと、優れたシュールレアリストとして貴重な存在だ。


 1階のスペースに紙に描かれた大きな作品が展示されている。毛が生えた猿の腕のような物体がうねうねと伸びている。作家のテキストによると、玄関近くの天井の隅のひび割れから雨水が滴り落ちるようになり、その開口部の回りに黒いすすのようなものが年輪のように拡がっている、とある。恐らくカビの一種だと思われると書かれている。それに触発されて描かれたのがこれだろう。

 ほかに2階の展示室にあった大きな赤いリボンの作品が印象に残った。椅子の上に鎮座している大きな赤いリボンは床を覆った黒いカビに侵食され、リボンの一部もカビが浸透しつつある。天井や壁は赤い色がしみ出しているかのようだ。


 西欧のシュールレアリスムと異なり、どこか湿っぽさを感じさせるのが日本的とも言えそうだ。ともあれ、西欧のシュールレアリスムに影響されて制作を始めたのだろうが、独自に日本的なシュールの作品を作っている。ぜひ神田まで足を運んでほしい。
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野津晋也展「浮かぬ水」
2016年6月20日(月)〜7月2日(土)
11:00〜18:30(最終日は17:00まで)
日曜休廊
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アートギャラリー環
東京都中央区日本橋室町4-3-7
電話03-3241-3920
http://www.art-kan.co.jp/
※JR神田駅東口を出て中央通りを右折し(三越方向へ向かい)、カメラのキタムラの先を右折、すぐに老舗の蕎麦屋「砂場」があり、その手前を左折するとすぐ。(徒歩3−4分)
あるいはJR新日本橋駅または地下鉄三越前駅下車、連絡通路にて2番出口より徒歩3−4分