ギャラリイKの小野サボコ展がおもしろい


 東京京橋のギャラリイKで小野サボコ展が開かれている(3月1日まで)。小野は京都精華大学美術学部版画専攻を卒業し、現在研究科1年らしい。2009年から神戸を中心に大阪や東京で個展を開いている。今回のギャラリイKでの個展は2012年に続いて2回目となる。2012年は画廊の壁面いっぱいにアルミの板を張り巡らせていた。そのアルミ板には鍛造されたような無数の小さな凹凸がつけられていた。今回もそれは変わらない。ただ前回と異なるのは、画廊の空間いっぱいに小さな家型の立体が吊り下げられていることだ。画廊の方に伺うと80個も吊り下がっているという。家型はすべて空洞で厚紙で作られており、まわりにアルミテープが貼られている。作家はこの家型の立体を「ヒカルハウス」と呼んでいる。壁面は「ヒカル抽象画」というらしい。作家の言葉が画廊の入口に貼られている。

このヒカル抽象画とヒカルハウスの持つユーモラスな揺らぎとの化学反応をただただ観て頂きたい。/2009年産まれのヒカルハウスは全て空洞で出来ている。空洞とは広く考えると宇宙空間と繋がり合っている。/私達の暮らす住居も多くは窓があり扉があり換気口あり、穴だらけである。空洞だらけではないだろうか? /ヒカルハウスはそういった家の一番単純な建家の象徴として存在している。/飛躍的な事を言ってしまうと穴だらけの私達の体内自身も自ら発光する家なのではないかと思っている。/私達は光のなかに住んでいるのだ。//ヒカリヲタタク扉が開きヒカリニスム事を想い作品を鑑賞して頂ければ幸いである。

 画廊に足を踏みこむと壁面にアルミの壁が輝いている。空間に家型のオブジェが浮かんでいる。家型のオブジェは人の背丈かそれより高くテグスで吊られており、画廊の空間を進むと、空気の流れによって緩やかに回転したり動いたりする。すると空間が変わるのだ。
 アルミ板の壁に囲まれて空中に浮かんでいる、物理的にはそれだけのものだが、鑑賞者がその空間に足を踏み入れると空間が変貌する。家が空中を漂い始める。なにか不思議な空間に変わるのだ。吊り下げられただけの家型が、ゲシュタルト心理学の対象になるような、別種の意味を持ち始めるのだ。それは面白い体験だった。
 変貌した空間の意味を私は明示的に語ることができない。作家の意図を的確に捉えることもできない。ただ、個々の要素から独立した新しい意味が立ち上がっていることを驚くばかりだ。これは写真を見ても分からないだろう。実地に体験することをお勧めするものだ。




       ・
小野サボコ展「HIKARI NI SUMU.」
2014年2月24日(月)〜3月1日(土)
11:30−19:00(最終日17:00まで)
       ・
ギャラリイK
東京都中央区京橋3-9-7 京橋ポイントビル4階
電話03-3563-4578
http://homepage3.nifty.com/galleryk