原哲代の短歌

 いつ頃何で読んだのか憶えていないけれど、深く印象に残っている短歌がある。作者の「原哲代」さんはネットで調べても分からない。あるいは朝日歌壇で見たのだったか。


闘争後大学を去り二十年夫は一人の友もつくらず   原 哲代

 この闘争が70年頃の大学紛争を指しているのなら、短歌を作ったのは1990年ころになる。今から20年余ばかり前だ。これを読んだのもおそらくそのくらい前だろう。友に対するどんなに深い幻滅があったのか。あるいは内ゲバに関する辛い記憶なのか。
 小嵐九八郎『蜂起には至らず』(講談社文庫)を思い出す。副題が「新左翼死人列伝」といい、革マル派を除く27人の死者について書かれているのだ。その多くが内ゲバやリンチ、自殺、警察などに殺されている。
 「二十年夫は一人の友もつくらず」の一節はランボーの詩「別れ」をも思い出す。


小嵐九八郎「蜂起には至らず」をようやく読んだ(2008年7月19日)
小嵐九八郎のレジュメによる新左翼の歴史(2008年4月10日)
ランボーの「別れ」(2009年8月22日)


蜂起には至らず(新左翼死人列伝) (講談社文庫)

蜂起には至らず(新左翼死人列伝) (講談社文庫)