宝くじが当たるヤツ

 知人で私が「夜の帝王」と名付けた男がいる。彼は人並み外れて女性が好きで、水商売の女性はもとより、風俗の女性も素人の人妻も、さらにはフィリピンや韓国の女性たちとも遊んでいる。この間も家族には関西へ行って来ると言って韓国へ行って来たんだ。風俗店の店長とも親しくて、新しい女の子が入ると知らせてくれるんだ。マンションの玄関脇の部屋を自分の部屋にしたのも、夜中に家族に気づかれずに出かけられるから。
 夜の帝王の仕事はデザイナーで、仕事で印刷所に校正に行ったとき、工場から大きなトラックで印刷されたばかりの宝くじが運び出されるのを見たという。あんなに大量の宝くじが刷られているんじゃあ当たるわけがないよと言って、彼は決して宝くじを買わない。
 ところがある時義兄が亡くなって、2億円ほどの遺産を相続することになった。義兄は夜の帝王のお姉さんと結婚していて、二人の間に子供はいなかった。お姉さんが亡くなったあと、義兄は自分が死んだら奥さんの弟に遺産を与えるという遺言を残していた。二人はマジメに働いて、定年退職したら旅行をしようとひたすら貯金をしていた。それが2億円ほどになっていたという。
 このように、宝くじは当たる人には買わなくても当たるのだ。逆に100万円買っても当たらない人には当たらない。そして遺産を相続した夜の帝王は早速フィリピンへ遊びに行った。どうしてフィリピンへ行ったの? だってお金があるんだもん。そういう問題じゃないだろう。
 別の知人は私と同年輩なのに、現在付き合っている恋人は10歳ほど年上の人だという。ということは彼女は70歳ではないか! それって、しわくちゃじゃないのかと失礼な質問をすると、暗くしたら分からないからと答えた。最初カラオケバーでナンパしたんだけど、からかわれているんじゃないかと彼女がなかなか本気にしてくれなかったんだ。なるほど、そうかもしれない。いや、しかしどこの世界にも達人はいるものだ。