「粘菌 その驚くべき知性」を読んで

 中垣俊之「粘菌 その驚くべき知性」(PHPサイエンス・ワールド新書)を読んだ。粘菌=変形菌とは1時間に1cmくらい移動する菌だ。迷路を作って餌を置くと粘菌が移動して餌にたどり着く。迷路の両端に餌を置くと、複雑な迷路の最短距離を粘菌が結ぶことを中垣は「知性」と言っている。この研究は2008年にイグ・ノーベル賞を受賞した。
 粘菌という下等な生物に知性が認められるのか。われわれが食事をすると胃液が分泌されて食物が消化される。あるいは呼吸をすると空気が肺に入り酸素が取り込まれる。われわれは消化や酸素の取り込みを意識的に行っているのではない。身体が反応しているのだ。粘菌の行動もわれわれの身体の反応と同じレベルではないのか。
 人は知性を発達させた。知性=意識がものを考えている。しかし、粘菌の行動や身体の反応が基本なのであって、元来、知性=意識は必要ではなかった。知性抜きで生物は多くのことを成し遂げている。人の知性が余分で特殊なものなのだ。さて、では無意識はどこに位置づけられるのか?


粘菌 その驚くべき知性 (PHPサイエンス・ワールド新書)

粘菌 その驚くべき知性 (PHPサイエンス・ワールド新書)