ロボットという言葉を発明したチェコのSF作家カレル・チャペックに「園芸家12カ月」(中公文庫)というエッセイがある。これがすこぶる傑作だ。
- 作者: カレルチャペック,Karel Capek,小松太郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1996/03/18
- メディア: 文庫
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かつてこの(英国のある田舎の)大地主に、アメリカの大富豪が言った。
「どうしたらこういう完全なみどりいろの、ぎっしり目のつんだ非のうちどころのない、びろうどのようにやわらかな、むらのない、みずみずしい、いつもかわらない、ーーかんたんに言うとですな、つまり、おたくの庭のようなこういうイギリス芝が、どうしたらつくれるか、おしえてくだすったら、お望みの額をいくらでもお払いしますがなあ」
するとイギリスの地主の答はこうだった。
「それは、ごく簡単です。土をよく深く耕すんです。水はけのいい、肥えた土でなくっちゃいけません。酸性の土ではいけません。あんまり肥料気がありすぎてもいけません。重くってもいけないし、やせていてもいけません。それから、その土をテーブルのように平らにして、芝の種をまいて、ローラーでていねいに土をおさえつけるんです。そして毎日水をやるんです。芝がはえてきたら、毎週、草刈り機で刈って、刈り取った芝を箒で掃いて、ローラーで芝をおさえるんです。毎日、水をかけて湿らせるんです。スプリンクラーで灌水するなり、スプレーするなりして、それを300年おつづけになると、わたしんとこと同じような、いい芝生ができます。
300年とまではいかないが、私にも樹齢27年のツタの盆栽がある。種を採り播きし実生から育てて27年。1日もかかさず毎日水をやり、時々剪定し植え替え、それを27年続けたのだ。ちょっと自慢。それが先日似たような盆栽を店で見かけたらわずか5万円の値がついていた。