経絡をめぐって

 子どもの頃から湿疹体質でよく体のあちこちがかゆくなった。そこを掻くと体の別の部分がチクッとした。掻いた場所とチクッとした場所に関連性があるような気がしてそれを記録し始めた。これってもしかしたら経絡と関係があるのではないか。その辺りのことはその頃読んでいた藤岡喜愛の影響によると思う。
 はじめ自分で簡単な体の絵を描いてそれに記録していたが、通っていた皮膚科の先生がカルテに体の略図のゴム印を押してそこに患部を記入しているのをみて、理由を話してノートにゴム印を押してもらった。先生も経絡と関係があるだろうと言ってくれた。
 そのノートのコピーをたくさん作って、かゆい―ー掻く―ーチクッとした、それを記録していった。するとかなりの確率で同じ反応が認められた。同じ反応というのは、同じ所を掻いたときチクッとした場所が同一だったのだ。たとえば左腕の肘の内側を掻くと左の鼠径部がチクッとする。へその右下を掻くと右腕の肘の内側がチクッとする。左足の膝の裏側を掻くと左腕の付け根の裏側がチクッとする。だいたい同じ反応だった。
 最初は熱心にやったので、5年間で150例くらい記録したが、その後は手を抜いて17年間で50例しか記録していない。つまり22年間で200例記録したのだ。
 残念なことはゴム印の人体図が拡大コピーで使っているとはいえ、天地12センチくらいの大きさなので、記録の細部の厳密性に欠けることだ。
 
 藤岡喜愛は今西錦司の弟子、イメージ論が専門でユニークな研究をしていたが、研究をまとめる前に1991年に亡くなった。近いうちに藤岡喜愛についても書いてみたい。