巷房2の渡辺兼人写真展「墨は色」を見る

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DM葉書

  東京銀座の巷房2で渡辺兼人写真展「墨は色」が開かれている(7月31日まで)。渡辺は1947年、東京生まれ、1969年東京写真専門学校を卒業している。兄は人形作家の四谷シモン、1982年「既視の街」によって木村伊兵衛賞を受賞している。長く母校の講師をしていた。

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 渡辺の写真は一見地味だが、実は写真に画期的な新境地をもたらした。長く写真は綺麗だったり珍しかったりしたものや、決定的瞬間を写していた。渡辺は決定的でもなく珍しくもないありふれた街角風景を撮って写真作品にした。渡辺が写真学校で教えていたせいもあり、その手法は若い写真家たちに広まった。しかし、それを開拓したのが渡辺兼人であることを忘れてはいけない。渡辺は写真に革命を起こしたのだ。

 今回カラー写真を展示している。前回の巷房の個展の折り、もう良い印画紙が手に入らなくなったと言っていたから、カラープリントに変えたのだろうか。

 人も車も通らないどこにでもありそうな街を切り取って作品にしている。展覧会期は2週間とたっぷりあるので、ぜひ見て欲しい。販売価格も55,000円だ。

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渡辺兼人写真展「墨は色」

2021年7月19日(月)―7月31日(土)、日曜休廊

12:00-19:00(最終日17:00まで)

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巷房2

東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビルB1F

電話03-3567-8727

http://gallerykobo.web.fc2.com/

 

 

蓮實重彦の押す美形女優

 蓮實重彦『見るレッスン』(光文社新書)を読んだ。蓮實は現在純粋な美形女優が不在だと嘆く。「とにかくこの女性が美しくて記憶に残った」という映画がないことが気がかりです、と。他方、韓国映画には本当に美しい女優がたくさん出てきます。かつては美男美女を見に行くのが映画の楽しみの一つでした、とも。

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『よこがお』の筒井真理子さんは、演技が見事で存在感もあるのですが、純粋に美形の女優ではない。

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黒沢清監督の新作の前田敦子さんは映画的に興味深くていいのですが、いわゆる「美形」ではない。

 

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同じ黒沢清監督の『ビューティフル・ニュー・ベイエリア・プロジェクト』でひたすら強い役を演じていた三田真央さんはハッとする感じが少しありました。でも、彼女も整った美形というわけではなくとにかく強そうな印象の方です。

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中島貞夫監督の新作に出ていた多部未華子さんだって非常にいいけれども、美形ではありません。不思議な魅力があって面白い感じの人です。

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黒沢さんの『LOFT ロフト』に出ている中谷美紀さんは例外的な美形です。彼女は実際に会ってみるとちょっとドキドキするタイプの人かもしれませんが、その後、あまり映画に出ていませんね。

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きみの鳥はうたえる』の石橋静河さんは、例外的に美形でやっていける女優だという印象を持ちました。典型的な美形ではないけれども、いくらでも美しく撮ることのできる女優さんだと思いました。

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 私は生意気にも映画は作家主義で見るから、監督で選ぶので、女優を目当てに見に行ったことはほとんどない。だが、昔木冬社の芝居に毎年平幹二朗が出演していたことがあった。ある時から平が出演しなくなり、その年木冬社の芝居の客の入りはいつもの半分だった。ああ、客は平幹二朗を見るために来ているんだと印象に残った。

 

 

 

 

 

蓮實重彦『見るレッスン』を読む

 蓮實重彦『見るレッスン』(光文社新書)を読む。副題が「映画史特別講義」とあり、蓮實が編集者相手に話して本書が成立している。だから分かりやすい文章になっている。

 蓮實はいま日本映画が第三の黄金期に差し掛かったという。そして日本の監督の個々名を挙げてその作品を良い、悪いとはっきり断定する。これが面白い。

〔良い監督〕

濱口竜介寝ても覚めても』『ハッピーアワー』

三宅唱きみの鳥はうたえる』『Playback』『ワイルドツアー』『やくたたず』

黒澤清『旅のおわり世界のはじまり』

鈴木卓爾嵐電』『ポッポー町の人々』

森はるか『空に聞く』『息の跡』『the place named』

小田香『セノーテ』『鉱 ARAGANE』

伊勢真一『えんとこの歌 寝たきり歌人・遠藤滋』

〔良くない監督〕

山戸結希『ホットギミック』『溺れるナイフ

蜷川実花:天性の映画監督でない人が撮っているというのが見え見えです。

 またアメリカ映画ではディズニーが徹底的に否定される。「わたくしは、ディズニーなどなくなったほうが、世の中にとって健全だと本当に思います」。蓮實はワイダもポランスキーも評価しない。タヴィアーニ兄弟のどこがいいのか理解不能だという。

 2018年に「非英語圏の映画」というテーマで100本を決めた際、第1位に選ばれたのは黒澤明の『七人の侍』だった。しかし蓮實を始め日本人の選者が誰一人黒澤明に票を入れなかった。蓮實は1位に溝口健二の『残菊物語』を選んだ。

 蓮實の大江健三郎論を読んだことがある。これは評価できなかった。しかし映画論については、淀川長治との対談が素晴らしかったので、この世界の第一人者だと思っている。

 その対談について、

 

淀川長治蓮實重彦の映画対談がおもしろかった!

https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/20070207/1170798991

 

 その後この対談は文庫本に収録されているようだ。

 

 

 

 

ガジュマルのガジュマルクダアザミウマ

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  ベランダのガジュマルの鉢植えの葉が2、3枚ケロイド状になっている。今までの経験から、これはアザミウマの被害だと分かった。そしてガジュマルに寄生するアザミウマはガジュマルクダアザミウマに違いない。

 被害葉を採取し、綴じ合わされた葉を開いてみる。薄黄色い小さな虫がびっしりといる。これは幼虫だ。他に少数だが、黒くて羽が生えたのがいる。これが成虫だ。

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 ガジュマルは別名榕樹とも言う。それでガジュマルクダアザミウマはヨウジュノクダアザミウマとも言う。私は東京在住だが、都内の鉢植えのガジュマルで、この被害はしばしば見てきた。おそらく持ち主は気が付いていないか、あるいは病気だと思っているかもしれない。

 防除は被害葉を摘み取って踏み潰すかゴミと一緒に棄てれば良い。殺虫剤ならオルトラン粒剤などを根元に散布するのが有効だ。これは殺虫成分が根から吸収されて木全体に行き渡り、寄生した害虫を駆除する。だからちょっと時間がかかり、被害を見つけてからでは遅いかもしれない。食用作物と異なり、観葉植物は毒性の心配がいらない。

 

 

Stepsギャラリーの吉岡まさみ展「秘密の記憶2021」を見る

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  東京銀座のStepsギャラリーで吉岡まさみ展「秘密の記憶2021」が開かれている(7月24日まで)。吉岡は1956年、山形県生まれ。1981年に東京学芸大学教育学部美術科を卒業している。1982年に東京のかねこ・あーとGIで初個展、以来同画廊やときわ画廊、巷房などさまざまな画廊で個展を行ってきた。2007年からはアメリカやドイツなどでも個展を行っているし、2015年にはセルビア国立美術館で倉重光則とセルビア人画家との4人展を行った。またドイツで日独のアーチストによるグループ展にも参加している。

 ギャラリーの入口近くのの壁に吉岡のインスタレーション作品が描かれている。その制作方法について、以前聞いた話では、

 

1.B1の大きさの紙にマジックインクでドローイングする。

2.ドローイングを縮小コピーし、透明フィルムに転写する。

3.プロジェクターを使って、フィルム作品を画廊の壁に大きく投影する。

4.投影された作品の線の上をなぞりながらデザインテープを貼っていく。

5.テーピングはすべてスタッフが行い、作家本人は制作に加わらない。

 

 今回もあまり変わってはいないだろう。画廊の壁面へのテープを貼る作業はスタッフにまかせ、吉岡は一切タッチしない。もちろんドローイングは吉岡が描くし、テープの色もどの壁面に投影するかも吉岡が決めている。しかし仕上げには一切タッチしていないのだ。

 壁に写真が貼られ、写真の上からドローイングを元にしたテープが貼られている。すると、写真が表している記憶と、それにまつわる茫漠としたさまざまな記憶を雲のような霧のようなテープで描かれた形態が表現しているのだろうか。

 奥の事務所の壁には、板に描かれた(転写された)図形を削った作品「スクラッチドローイング」が展示されている。

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吉岡まさみ展「秘密の記憶2021」

2021年7月14日(水)―7月24日(土)

12:00-19:00(日曜休廊、土曜日17:00まで)

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Stepsギャラリー

東京都中央区銀座4-4-13琉映ビル5F

電話03-6228-6195

http://www.stepsgallery.org