阿部朋美・伊藤和行『ギフテッドの光と影』を読む

 阿部朋美・伊藤和行『ギフテッドの光と影』(朝日新聞出版)を読む。副題が「知能が高すぎて生きづらい人たち」というもの。著者たちは朝日新聞の記者で、本書は朝日新聞デジタルに連載したもの。

 ギフテッドについては以前、角谷詩織『ギフテッドの子どもたち』(集英社新書)を読んでいる。私の友人にもIQ140の優秀な技術者や、親戚の女性でIQ170の天才がいるからギフテッドについても多少のことは知っているつもりだ。

 本書は新聞に連載しただけあって、ギフテッドについて幅広く取材している。小学生でとびぬけた知能を示す者、戦時中に行われていた日本のエリート教育、各国の事情。そしてギフテッドとされた者たちの苦労が紹介される。

 しかし、読み終わって不満が大きかった。内容が通り一遍で、事例を紹介してそれ以上の踏み込みが足りない印象だ。この辺りは新聞記者という特性なのかもしれない。新聞連載ということで、短期間で取材しまとめて記事にしなければならなかったのだろう。

 ギフテッドの人たちが大人になって苦しんでいることとか、才能を生かす道が与えられなくて逆に半端な仕事にしか就けないでいる事例とか、英才教育が成功した事例とか、取材すべきことはまだまだあるはずだ。

 こういった事例はアメリカのサイエンスライターが取り上げてくれたら面白いものになるのじゃないだろうか。