南天子画廊の岡崎乾二郎展を見る

 東京京橋の南天子画廊で岡崎乾二郎展「頭のうえを何かが」が開かれた(12月23日まで)。これは出版記念展と題されていて、『頭のうえを何かが』(ナナロク社)という岡崎乾二郎の新刊出版に合わせた個展だった。



 画廊に展示されている絵を見て驚いた。ほとんど幼児の描いたような稚拙な絵に見える。『頭のうえを何かが』を購入して帰宅してじっくり見た。岡崎が最近描いた作品の画集になっていて、南天子画廊ではその原画を並べていた。

 岡崎は2021年10月30日の夜、突然指がもつれ、腕から力が抜け、右手右足が動かなくなり、椅子からずり落ちるように床に横たわった。奥さんが救急車を呼び救急病院に入院した。その時もう右半身は完全に動かなくなっていた。脳梗塞だった。ただ意識は明瞭で顔面の障害もあまりなく、ほぼ正常通り会話することができた。

 しばらくしてリハビリを受けるようになった。入院して最初の数日は動かなかった右手がわずかの角度だが握ることができるようになった。そしてわずかずつ手が動かせるようになっていく。

 緊急入院して3週間後くらいにリハビリ病院に転院した。その2週間後くらいに初めて太い色鉛筆で猫の絵を描いた。それが本の表紙になっている絵だ。それから徐々にしっかりした絵になっていく。3月26日には、入院中初めてアクリルで抽象画を描いている。

 2022年4月20日に退院する。発病してから半年近く経っていた。その成果をまとめて画集にしたのが、この『頭のうえを何かが』だった。

 末尾に「リハビリ記」として45ページも岡崎の文章が綴られている。アクリルの抽象画と、この「リハビリ記」を読めば岡崎がかなり回復したのが分かる気がする。大変でしたね。

     ・

岡崎乾二郎展「頭のうえを何かが」

2023年12月4日(月)―12月23日(土)

11:00-18:30(日曜休廊)

     ・

南天子画廊

東京都中央区京橋3-6-5

電話03-3563-3511

http://www.nantenshi.com