池谷裕二『自分では気づかないココロの盲点 完全版』を読む

 池谷裕二『自分では気づかないココロの盲点 完全版』(講談社ブルーバックス)を読む。副題が「本当の自分を知る練習問題80」。脳には「認知バイアス」という思考や判断のクセがあるという。それを80項目の質問と答えによって教えてくれる。

 デパートの食品売り場で、6種類と24種類のジャムを売るブースではどちらが宇売り上げが多かったか? 答えは6種類のジャムを売るブース、これは脳が同時に処理できる情報量は有限で、許容量を超えると選ぶことをやめてしまうから。

 アメリカでは毎年ハリケーンに人名がつけられる。男性名と女性名ではどちらの被害が大きいか? 答えは女性名。これは女性名には「優しそう」な印象があるため、危険性を低く見積もり被害対策を怠ってしまうから、と。

 英単語テストの対策としては、単語リストを見て繰り返し頭に叩き込むより、繰り返し確認テストを解いてみる方が効果的だという。脳は「記憶すべきかどうか」を「出力」の頻度で決めるという。だからテストでその知識を使ってみる方が記憶としてよく定着する。「物知りの人は、ほぼ例外なく“おしゃべり”です。他人に向けて出力し、記憶を強化しているのでしょう」と! これはよく納得できる。

 様々な課題を1時間の間に20種類やってもらった。10個は最後までやり通してもらい、残りの10個は未完成のまま中断してもらう。その後どんな課題を行ったのか思い出してもらう。よく思い出すことができたのは、未完成の課題の方だった。これは、目標に向かって課題をこなしている最中は緊張感があるため、心のどこかで課題を気にかけているのに対し、目標が達成されると緊張感から解放されて、記憶が褪せてしまうからと。だから、

・切りのよいところで仕事を切り上げるよりも、次の仕事に手をつけてから帰宅した方が、翌朝に仕事をスムーズに始められる。

・締め切りが先だからと書類を開封せずに放置するよりも、いったん目を通してから放置する方が、締め切り直前に効率よく仕事が片づけられる。

・新しい仕事の手順を人に説明するときには、事前に多くを説明しても記憶に留まりにくく、仕事を多少こなした後で説明した方が相手によく伝わる。

 実生活にも役立ちそうな話題がいくつも載っている。そこそこ面白かった。