三田晴夫『教養としての近現代美術史』を読む

 三田晴夫『教養としての近現代美術史』(自由国民社)を読む。三田は長く毎日新聞の美術記者を務めた人。私もこの人の難しいインスタレーション作品の展評など教えられたことが何度もあった。

 さて、不思議な題名だ。『教養としての~』とは何を言いたいのか。それは日本のビジネスパーソンが海外の赴任先で、特に美術に関するコミュニケーション・ギャップに悩まされているということから、その対策として企画されたようなのだ。

 なるほど、近現代の世界の美術史がきわめてコンパクトに紹介されている。それは見事なものだ。目次をひろってみる。

第1部 19世紀絵画

ロマン主義新古典主義写実主義バルビゾン派印象派と新印象派象徴主義/世紀末絵画

 

第2部 20世紀絵画

表現主義フォーヴィスム/フランス・キュビスム/イタリア未来派ロシア・アヴァンギャルド/沸騰した反芸術~ダダイズムデュシャン/抽象画の台頭~デ・ステイルバウハウス/具象画の変容/シュルレアリズム/第2次大戦と美術/熱い抽象~アンフォルメル/抽象表現主義アメリカ抽象画の展開/ポップ・アート/ミニマル・アート/コンセプチュアル・アート・復活した絵画~新表現主義、ニュー・ペインティングなど

 

第3部 ポストモダン絵画・彫刻

ポスト・モダンと美術/彫刻、ランドアート、梱包芸術、光芸術など/西洋で活躍している東洋の美術家

 

 

 とても簡潔にまとめてある。本当に手ごろな美術史だ。ただ、ほとんど図版がないし、あっても白黒版だ。少なくとも画家の名前から作品が連想できなければ、せっかくの美術史が試験勉強の丸暗記にしかならないだろう。最低、簡単でもいいから画集を手許において参照する必要がある。

 あと、気になったのは頻発するゴジック文字だ。欧米の文章ならイタリックにすべきところ、ゴジックは太すぎる。表紙のデザインはきれいだった。