毎日新聞の「渡辺えりの人生相談」で25歳の女性が、なぜこんなにも働くのかと相談している(6月18日付け)。
なぜ人は必死に汗水流して働くのでしょうか。「1億総うつ時代」という言葉を耳にしますが、心の病にかかる人は多く、過労や職場での人間関係の問題が原因となる場合が大半で、労働の弊害を感じずにはいられません。なぜ人はここまでして働かなければならないのでしょうか。なぜ欲を捨てずに、働かなくても生きられる世の中を目指さないのでしょうか。
【回答】(前略)人の世の理不尽に悩み苦しんだ作家、トーマス・マンの残した言葉が「考えるな、働け」でした。私は中学生の時、机の前にこの言葉を書いて貼っていました。生きることがあまりにつらかったからです。(中略)
働くという作業には悩みや苦しみを消す作用があるのです。「働かされている」ではなく「自ら働く」。この違いこそが貧富の差を改善し、戦争の連鎖を食い止め、あなたの悩みも解消に向かわせるはずです。私もそんなテーマの芝居を上演します。(劇作家・俳優)
なぜ人は働かなければならないか。私は高校生のころそれを考えて一応の結論を出した。働かなければ食糧が手に入らないからだ。太古から人類は働いて食糧を手にしてきた。それを私は、「ナウマン象を追って暮らしてきたわれらの先祖」とまとめた。貧弱な武器しか持たない先祖たちはナウマン象を仕留めるのに大変な苦労をしただろう。それが働くことの原点なのだと考えるようにした。労働=働くことは大変なのだ。でも、それが人の原点なのだと。だから生涯がむしゃらに働いて来たのだ。