篠原有司男『前衛の道』を読む

 篠原有司男『前衛の道』を読む。篠原がネオダダの頃の活動をつづったもの。やんちゃな若者ができるだけ目立つような作品を作っている。読売アンデパンダン展に出品し、瀧口修造にそこそこ評価され、「アメリカ巡回現代日本美術展」の選抜責任者として来日したニューヨークの近代美術館キュレーター、ウィリアム・リーバーマンには高く評価された。

 しかし明確な思想も方法も感じられない篠原の作品は、首がぐるぐる回るマルセル・デュシャンのはりぼて像など、造形的にもとても評価することができない。パネルに貼ったケント紙を絵具を付けたグローブで殴るボクシング絵画も、様々なイラストも品がなく、評価した評論家の心情がわからない。

 先に読んだ赤瀬川原平の『反芸術アンパン』がネオダダに関する肯定的な優れた記録だとすれば、本書は否定的な記録だと断ぜざるを得ない。まあ、赤瀬川は後に芥川賞を受賞するほどの知性派だから、比べたら残酷かもしれない。

 本書には奥付が2つある。一つは、発行:1968年6月20日、発行所:美術出版社となっており、もう一つはタイトルに(完全復刻版)とあって、発行:2006年10月1日、発行:ギューチャン・エクスプロージョン! プロジェクト実行委員会、発売:美術出版社となっている。ギューチャンというのは篠原有司男のニックネームだ。

 さらに小さな文字で「なお、本書は原書版『前衛の道』実物を版下として製作したものです」と書かれている。

 すると、美術出版社が1968年に発行した原著はすでに版が残ってなく、改めて文字を組むのではなく原著を写真製版して制作したのだろう。しかし、ギューチャン・エクスプロージョン! プロジェクト実行委員会には当然取次に口座がなく、美術出版社が発売元になっているのだろうと思われる。

 

 

前衛の道 (GYUCHANG EXPLOSION!PROJECT)

前衛の道 (GYUCHANG EXPLOSION!PROJECT)

  • 作者:篠原 有司男
  • ギュウチャンエクスプロージョン!プロジェクト実行委員会
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