福井紳一『戦後日本史』を読む

 福井紳一『戦後日本史』(講談社+α文庫)を読む。戦後日本史についてきわめて詳しく書かれている。日本近代史はずいぶん読んできたつもりだけれど知らないことがたくさん書かれている。

 1964年、アメリカ軍の司令官だったカーチス=ルメイに勲一等旭日大綬章という勲章を与えている。航空自衛隊を指導した功績によって。しかしルメイは焼夷弾を開発し東京大空襲をはじめ日本全土の空襲を計画・実行した人物で、日本では「鬼畜」ルメイなどと呼ばれていた人物だった。

 1948年12月23日、東条英機A級戦犯7名が巣鴨プリズン(現在の池袋サンシャインがある場所)で処刑される。日本人は天皇誕生日を「天長節」といって祝ったので、GHQは皇太子(現在の上皇)の誕生日に処刑した。天皇誕生日のたびに敗戦を思い出させるという意図があったと言われている。

 雑誌『映画芸術』に映画評を寄稿していた斎藤龍鳳が取り上げられている。1971年にガス自殺したが、齋藤が予科練くずれだとは知らなかった。映画をダシに過激な政治論をぶっていた。

 43歳の若さでガンで亡くなった桐山襲という作家が紹介される。天皇へのテロの系譜をテーマにした「パルチザン伝説」、沖縄の自由民権の活動家・謝花昇と皇太子の沖縄来訪の際モロトフ・カクテル(火炎瓶)を投げつけた沖縄の青年を重ねた小説「聖なる夜聖なる穴」、明治時代の神社合祀問題と学生運動を重ねた「風のクロニクル」、連合赤軍事件を扱った「スターバト・マーテル」「都市叙景断章」など、いい小説を書いたという。

 戦後の演劇は、俳優座文学座、民芸を中心とした新劇で始まり、1960年代後半、「アンダーグラウンド演劇(アングラ演劇)」と呼ばれる、唐十郎状況劇場寺山修司天井桟敷佐藤信らの68/71黒色テント、鈴木忠志の早稲田小劇場、蜷川幸雄らの現代人劇場が活躍する。私は1970年ころから黒テントを追っかけてきた。

 1970年代の政局として、田中角栄三木武夫福田赳夫大平正芳などの総理大臣が紹介される。

 とても参考になったのだった。