TOKAS hongoの堀 園実展「なみうちぎわの協和音」を見る

 TOKAS hongo(トーキョーアーツアンドスペース本郷)で堀 園実展「なみうちぎわの協和音」が開かれている(9月24日まで)。堀は1985年静岡県生まれ、2009年に沖縄県立藝術大学大学院彫刻専修を修了している。私は2010年のガレリア・グラフィカbisでの初個展を見ている。



 今回の個展では、床一面に小石を並べている。流木のような形も見える。これらは粘土で作られているようだ。作家のテキストから、

私やあなたを含むこの世界について。
わたしたちは目の前の世界に存在するものをどのように把握しうるのか、なるべく偏見を持たず、現実をありのまま受容するために。
現代の社会の(特に人権に対する)考えを反映するキーワードとして、多様性が挙げられる。多様化は、ものごとを細分化することとほぼ同じだ。しかし例えば一人の人間のアイデンティティを細分化されたカテゴリーから語ることは無謀である。もっとも同一性の上に多様が成り立つことに注意を払わなければ、細分化は孤立を生む材料になる。
そこでわたしたちが日頃見る可視的な景色に疑いを持つことを提案したい。目の前に見えるものそれ自体の存在は一つの事実でも、解釈は個々で異なる。自らの解釈を疑い異なった見方を試せば、わたしたちは予想を超えた(あるひとつの)ありのままの世界を発見できるだろう。

 難しいことを言っている。TOKASのリーフレットには別の言葉が綴られている。

運動によって生じる摩擦は、生き物が互いによりよく生きるためのコミュニケーションそのものである。彫刻表現における重力との対峙や素材の意味に有限の身体を照らし合わせ、意識にある自他の境界または接点を問いその不明瞭さを三次元上で表現するために、視覚や聴覚といった感覚に静的に働きかける作品を制作する。

 床一面の小石は、「運動によって生じる摩擦は、生き物が互いによりよく生きるためのコミュニケーションそのもの」を表わしているのだろうか。その摩擦が協和音を表わしているのだろうか。造形としてはおもしろいものだ。公的な施設の広い床一面を使って小石状のものを波打ち際のように展示している。
 参考までに2010年の初個展「ことばとは」で展示した大きな立体の写真を下に示す。

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堀 園実展「なみうちぎわの協和音」
2018年8月25日(土)−9月24日(月・祝)
11:00−19:00(月曜日休館)
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トーキョーアーツアンドスペース本郷
東京都文京区本郷2−4−16
電話03-5689-5331
http://www.tokyoartsandspace.jp/
御茶ノ水駅(JR中央線東京メトロ丸の内線)、水道橋駅都営地下鉄三田線JR総武線)、本郷三丁目駅東京メトロ丸の内線)、各駅より徒歩7分