鈴木貴博『アマゾンのロングテールは、二度笑う』を読んで

 鈴木貴博『アマゾンのロングテールは、二度笑う』(講談社)を読む。副題が「50年勝ち残る会社をつくる8つの戦略」というもの。副題のとおり経営戦略の本だ。発行が2006年10月と古い。古い経営戦略の本で、しかも経営とは私に最も遠い世界だ。なぜ読むのか?
 「アマゾンのロングテール」という言葉に惹かれたのだ。私がブログを始めたきっかけは梅田望夫の『ウェブ進化論』だった。2006年の2月に発行されて、それを読んだ日にブログをはじめた。この梅田の本に、「アマゾンのロングテール」という言葉が紹介されていた。それを知ったときの強い印象がまだ残っている。それは「アマゾンの売り上げの3分の1は、普通の書店が在庫を持たないマイナーな本から上がっている」というものだった。
 11年前に発行された経営に関する本だから細部はずいぶん古くなっている。章のタイトルを見る。「なぜイトーヨーカドーはダメになったのか」「なぜ松下はマネシナクなったのか」「なぜ小川直也インリン様に負けたのか」「なぜ外資系金融マンはBMWを買うのか」「なぜスタバはアメリカンコーヒーを駆逐したのか」「なぜローソンとファミマは上海のコンビニに勝ったのか」「なぜアマゾンはロングテールで二度笑うのか」「なぜウィンドウズには欠陥があるのか」というもの。
 松下電器の章で、日本の缶入り飲料のトップ企業はコカ・コーラだという。缶コーヒーの「ジョージア」の売り上げがすごい。当時、「このジョージアは、1年間で大企業が1社買えてしまうほどの利益をアトランタの本社にもたらしています」というもの。そのわけは、コカ・コーラ自動販売機の数が、日本国内でダントツに多いからだという。鈴木はランチェスター戦略を紹介する。「双方が同じような戦い方で消耗戦を選ぶと、必ず勢力の大きい方が勝つ」という法則。企業同士の戦いでは、「戦力差がある者同士が同じ戦い方で正面衝突した場合、成果の差は必ず戦力の差よりも大きく広がる」という原則がある。それで、トップメーカーは下位メーカーの商品の差異化に対して、同質化した商品をぶつけていく。同質化を基本戦略とするトップ企業は、「商品開発力」と「販売力」を武器に同質化を仕掛ける。コカ・コーラジョージアで成功した理由は、自動販売機の数の圧倒的な多さからだった。松下はかつて専売店の数で圧倒していた。マネシタ電器といわれるほど後発のコピー商品のような戦略で売っていても、販売店の数が圧倒的だったからトップ企業であり続けた。それが崩れたのは、客が近所の専売店で買わなくなって、ヤマダ電機とかヨドバシやビックカメラなどの併売店で買うようになったからだ。
 スタバが勝ったのは下流市場を制したからだというのもおもしろかった。私が企業戦略を知らないこともあるが、本書から教えられることが多かった。巻末の「主な参考文献・資料」にも、梅田望夫ウェブ進化論』(ちくま新書)が載っていた。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

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