山本弘の作品解説(46)「山と雲(仮題)」


 山本弘「山と雲(仮題)」油彩、F6号(41.0cm×31.8cm)
 1976年制作、山本46歳のときの作品。左下に漢字の「弘」のサインがある。
 頂をやや左に寄せて高い山が描かれている。稜線を水色で縁取っている。この山は何だろう。いつもモチーフにしている飯田市の西に聳える風越山かもしれないが、それにしては急峻すぎるのではないか。北斎の冨嶽三十六景の「凱風快晴」、通称「赤富士」からモチーフを得た富士山の絵かも知れない。「赤富士」の空に広がる鰯雲が山本では渦を巻くような強い形の雲に変わっている。
 山と雲と二つの単純なフォルムが強い印象を与えて、一度見たら忘れられない。色彩も美しい。F6号という小品ながらとても魅力的だ。
 これも今月末のK'sギャラリーanでの個展に並べる予定。ぜひ実物の美しさを実感してほしい。