山本弘の作品解説(95)「崩」

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 山本弘「崩」、油彩、F4号(24.0cm×33.5cm)
 1976年制作。山本弘46歳。最晩年の作品になる。左上から右下にかけて複雑に線が走っている。標題「崩」から見ると、山の斜面が崩れているように見える。崩壊する山腹を描いているのだろうか。右側に薄い赤や緑が塗り重ねられていて、一見して感じるような無彩色の作品ではない。
 山本にしては厚塗りだ。いつも即興的に描くせいもあってか厚塗りは画面の一部だったが、これは全面的に厚塗りになっている。作品を完成させるのに苦労したのだろうか。
 制作した1976年から2年間山本は断酒をしている。そして1976~78年の3年間が晩年の豊穣の年なのだ。酒を断って作品の制作に没頭したその最初の年に制作した作品だ。
 亡くなるまでもう5年しか残っていなかった。