山本弘の作品解説(100)「題不詳」

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「題不詳」1976年制作


  山本弘「題不詳」、油彩、F10号(45.5cm×53.0cm)

 1976年10月制作、46歳のときのほとんど最晩年の作品。何が描かれているのだろう。左下に「ヒロシ」のサイン。片仮名のサインは珍しいが時々書かれている。

 実はほとんど同じ構図、同じテーマの作品が2年後1978年にも描かれている。こちらはF4号と一回り小さい。下に示したのがそれだ。最初これらが何を描いているのか分からなかった。

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「題不詳」1978年制作

 どちらも左に丸いものが描かれている。よく見ればその丸い中に目らしきものが見える。F4号の作品では髪の毛らしきものも見えている。つまり男が横たわっているのではないか。そう考えると、1971年の作品「日々酔如泥」を思い出す。「日々泥の如く酔う」と題された、酒瓶を前に置いて寝ている男の絵だ。下に示したが、これは飯田市美術博物館所蔵となっている。上の2つの作品は、この1971年の作品を、5年後と7年後に再び描いたものではないか。つまりどちらも「日々酔如泥」なのだ。それは正に山本弘の日常、日々そのものだった。

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「日々酔如泥」1971年制作

 1971年に具象的に描いたテーマを5年後と7年後には半ば抽象的に描き直している。この数年で山本が大きく変化したことが分かるというものだ。