国立新美術館でアンドレアス・グルスキー展を見る


 東京六本木の国立新美術館アンドレアス・グルスキー展が開かれている(9月16日まで)。ドイツ人の写真家で密集した「モノ」を巨大な画面で表示している。ちなみに上記ちらし表面の写真は、ニュートリノを観測するために作られた日本のカミオカンデを撮ったもの。
 展覧会のちらしから、

ドイツの現代写真を代表する写真家、アンドレアス・グルスキー(1955−)による日本初の個展を開催します。ドイツ写真の伝統から出発したグルスキーは、デジタル化が進んだ現代社会に相応しい、すべてが等価に広がる独特の視覚世界を構築し、国際的な注目を集めてきました。(中略)
……その作品は近年ますますコンセプチュアルな様相を強めています。同時に、まるで抽象絵画のような写真は、写真を使った画家とも言えるグルスキーが開拓した新たな境地を伝えています。


 ちらしの裏面を提示したが、上中はドイツのライン川、対岸の建物はデジタル処理で消してある由。上右はタイのバンコクの汚染された川。下左は「V&R」と題されたファッションショー。下中は北朝鮮ピョンヤンマスゲーム。下右はアメリカロサンゼルスのの99セントショップの店頭風景。
 ほかにも、1990年の東京証券取引所、どこかヨーロッパの大聖堂、島や岬の見える海の航空写真に南極大陸等々、巨大な写真が並べられている。大型カメラで撮っているらしいが、デジタル処理も行われている。「無題」というタイトルのものが多ぃ、場所などを特定しないで、大量のモノ、物量、マッスを提示し、そのことに対する驚きを狙っているようだ。
 どうして今までこの写真家のことを聞いたことがなかったのか。それはグルスキーの写真に思想性が希薄だからではないか。大量のモノを撮っている、それを巨大画面で見せている、それは確かに現代の見世物に近いかもしれない。だが、物珍しさ以上の大量のモノに対する批評性が見当たらない。ちらしのテキストに「まるで抽象絵画のような写真」とあるが、抽象絵画にはミニマル・アートでさえ思想があるのだ。グルスキーの名前があまり話題にならなかったのも不思議ではなかった。
 入場料は大人1,500円だった。コストパフォーマンスとしては高すぎる。個人的な満足度からいえば500円くらいだろう。
       ・
アンドレアス・グルスキー
2013年7月3日(水)−9月16日(月・祝)
10:00−18:00、金曜は30:00まで(入場は閉館の30分前まで)
休館日=毎週火曜日
       ・
国立新美術館
東京都港区六本木7-22-2
http://www.nact.jp/