「アーティスト・ファイル2011」と「MOTアニュアル2011」「MOTコレクション」を見る

 4月30日に国立新美術館で行われている「アーティスト・ファイル2011」と東京都現代美術館の「MOTアニュアル2011」それに常設展である「MOTコレクション展」を見た。
「アーティスト・ファイル2011−−現代の作家たち」は8組の作家が取り上げられている。中井川由季の大きな陶の作品が印象深かった。岩熊力也はコバヤシ画廊で何度も見ているが、まとめて見たらとても良かった。松江泰治もツァイト・フォト・サロンで何度も見たが、今回のカラー写真やビデオ作品は以前のモノクロ写真に劣らず面白かった。
 東京都現代美術館の「MOTアニュアル2011 世界の深さのはかり方」も6人の作家が取り上げられている。池内晶子は空間に細い糸を張り巡らせている。八木良太無人島プロダクションなどで発表してきた作家だ。氷で作ったLPレコードから音を出したりしていたが、今回はカセットテープで表面を覆ったボールをヘッドに当てて音を出している。以前ギャラリイKでよく見た冨井大裕やフタバ画廊で発表していた関根直子など。
 東京都現代美術館は常設展が充実している。1階と2階を合わせると3,000平米もあるそうだ。特別展示として森万里子なんかが取り上げられているが、2階の「クロニクル1947ー1963 アンデパンダンの時代」が面白かった。これは日本美術会のアンデパンダン展と読売新聞社主催のアンデパンダン展が併行して行われた時代を取り上げている。公立美術館の企画にこういう切り口で取り上げられたことはなかったと思う。日本美術会の作家として、内田巌、井上長三郎、大塚睦、鶴岡政男、寺田政明、桂川寛高山良策、山下菊二、中村宏池田龍雄などが取り上げられている。
 読売アンパンでは、杉全直、村井正誠、福沢一郎、佐藤多持、古茂田守介などが紹介され、さらに「アンデパンダン作家」「異端の画家たち」「反芸術」と括って、吉仲太造、尾藤豊、刀根山光人、國吉康雄、工藤哲巳、菊畑茂久馬など多彩な作家が集められている。「MOTコレクション」は厚い冊子こそ作られていないが、小さなリーフレットがあり、「アンデパンダンの時代」を企画した学芸員による解説と思われるテキストがとても充実している。図版なしのテキストだけでも良いので雑誌か何かに執筆してくれることを望みたい。
 この「クロニクル1947ー1963 アンデパンダンの時代」が一番おもしろかった。これに関連して、5月3日に東京都現代美術館地下の講堂でシンポジウムが行われた。パネラーは展覧会を企画した学芸員の藤井亜紀、二つのアンデパンダン展に出品した画家の池田龍雄、日本美術会の稲井田勇二、同じく木村勝明の各氏だったが、これも面白かった。


・「アーティスト・ファイル2011」(国立新美術館)6月6日まで
・「MOTアニュアル2011」(東京都現代美術館)5月8日まで
・「MOTコレクション」(東京都現代美術館)5月8日まで