1月26日のテレビ東京の「開運! 何でも鑑定団」に李朝の井戸茶碗が出品された。殿様から拝領した青井戸茶碗だったが、明治になって火事に遭い、焼けて汚なくなってしまった。それに付けられた評価が350万円! でももし焼けていなかったら3,500万円だという。これと同じ形の青井戸茶碗が根津美術館に収蔵されている。秀吉から勝家に与えられたという来歴の茶碗は、現在評価をしたら数十億円だと中島誠之助がいう。もう20年ほど前になるが、根津美術館でその井戸茶碗の展示を見たことがあった。茶碗に関する知識もほとんどなく、鑑賞眼もなかった私にさえ、その茶碗は衝撃的な美しさだった。その時の感動を今なお憶えている。
茶碗一つを50億円として、それを作った李朝の無名の陶工の収入と比べたらどうなるのだろう。陶工の年収を現在に換算して500万円としたら、50億円というのは1,000年分の年収ということだ!
同じようにゴッホの絵の評価を考えてみる。仮にゴッホの絵の値段が1点100億円としたら、50点で5,000億円になる! ゴッホは生涯売れなくて、やっと弟のテオが1点購入しただけだった。貧しいゴッホをテオが養っていた。ゴッホの年収を50万円としたら、5,000億円は100万年分の年収になる! 何と言うことだろう。
しかし、それでも良いと思う。たとえ無名だったとしても人間がそれをなしたのだ。私たちの仲間の1人が。それは素晴らしいことだと断定できるのだ。