プロヴァンスの諺

 加藤周一「続羊の歌ーーわが回想ーー」(岩波新書)を35年振りに読み返している。「羊の歌」ともどもすこぶる面白い。その中に次の一節があった。

 私はニースの料亭の壁に読んだプロヴァンス語の諺を私自身にくり返した。「愛は時を忘れさせ、時は愛を忘れさせる」。

 そうかこの諺を知ったのはこの本だったのか! 去る者日々に疎しも、眼から消えたものは心からも消えるも、大同小異だ。いや、否定的に言っているのではない。そのように人は癒されるのだ。

続 羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 690)

続 羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 690)