1枚の写真

 私が1歳未満だった頃の写真がある。陽当たりの良い屋外で籐椅子に座らされている。座らされているというより、ちょこんと置かれている感じだ。まぶしいのか眼を細めている。これがおまえのちっちゃい時だよと言われていた。
 中学生になった頃、東京から従兄がやってきて、この写真を見てこれ僕だよと言った。たしかに戦時中従兄一家はわが家に疎開していた。昭和19年生まれの従兄が被写体だとしても大きな矛盾はない。本当はどちらなのだろう。
 確認できる人たちはもういない。でも従兄はハンサムでプレイボーイだった。私とはだいぶ違う。あの眼の細い男の子はまぶしいだけじゃなく、やはり私ではないのか。
 疑問が呈されるともう完全な安穏はあり得なくなっている。