横浜トリエンナーレ、三渓園の内藤礼

 横浜トリエンナーレ2008の最終日(11月30日)にやっと出かけていった。根岸の三渓園で展示されている内藤礼の作品が見たかったからだ。朝9時前に家を出て三渓園には10時半頃に着いた。紅葉の季節とかで人が多かった。外苑の奥の方に内藤礼の作品はあった。横笛庵という古い小さな一間だけの建物のなかに作品が作られていた。

 畳の上に置かれた二つの電熱器には電源が入れられ、コイルが赤くなっている。その上に細い紐が天井から吊り下げられ、電熱器で暖められた上昇気流でゆらゆら揺れている。ただそれだけの作品だ。揺れる紐を見ていると、紐は大きく揺れたり垂れ下がったりしている。規則正しく動くのではないが、不規則に動いていると言ったらそれも違うだろう。動きは緩やかで紐の先端が上がったり下がったりする。「気配」という言葉が頭に浮かんだ。何の気配だろう。この紐の動きは何かの気配を連想させる。古い庵の小さな部屋に何かの気配がある。そいう作品ではないだろうか。
 近くの小さな渓谷というか小川では中谷芙二子の作品が展示されていた。滝に設置された霧を吹き出す装置によって小川と木々が深い霧に包まれている。その近くに建つ大きな茅葺きの農家の座敷ではティノ・セーガルのパフォーマンスが行われていた。男女が畳の上を抱き合って転がっている。
 これらの作品も内藤礼の作品を見た後では印象の薄いものだった。

 展示を見た後、三渓園を散策した。ここに来たのは初めてだった。どうしてもっと早くに来なかったのだろう。こんなにすばらしい庭園をいままで知らなかったとは! 個人の所有した庭園とは思えないほど規模が大きいのだ。紅葉もみごとだったし、立ち枯れた蓮池、キンクロハジロの群がる池、立ち去りがたかったが、横浜トリエンナーレは電車で2駅先の関内あたりに大きな会場がまだ3つもあるのだ。
 午後それらを駆け足で回ったのだったが、結局内藤礼の作品の印象が最も強かった。