即興芝居をさせられた

 芝居をさせられた事がある。これも画廊を回っているときで、銀座の小野画廊IIへ行ったとき、そこでは不思議な展示をしていた。作家に雇われた役者たちが画廊の中に作られた居間に待機していて、家族を演じている。見に行った客がそれに参加するというもの。画廊の外で作家が待っていて、客(私)とどんな役をやるか話し合い、役者たちにそれを伝える。
 私はお父さん役を選んだ。画廊の中ではビデオカメラが回っているそうだ。画廊に入ると4人くらいの男女がテーブルの回りに座っている。何だかテレビドラマの居間みたいだ。お帰りなさい、お父さん。今日は遅かったのねえ。夕飯はどうするの。今日は何をしたの。役者たちが次々に声をかけてくる。ビデオも回っているんだ。ああ、ちょっと残業が終わらなくてね、遅くなっちゃった。飯は食べてきた。こちらは素人だ。アドリブで会話をしていかなくてはならない。約束の10分はすぐ過ぎていって、画廊のドアが開いて作家が顔を出した。俺、何をしゃべったんだったっけ。ビデオは作家の作品として公開されると言っていた。
 観客参加型のパフォーマンスだ。