子供の頃の印象に残っている文学やマンガ

 小学生の頃読んだ本でまだ覚えているシーンがある。子ども向けのアメリカの西部開拓の話で、開拓者の子どもがインディアンの子どもと仲よく遊んでいる。しかしトマフォークを投げての的当てでインディアンの子どもは開拓者の子どもに勝てない。それでひどく不機嫌になってしまう。開拓者の子どもは父親に聞く。パパ、普段いろいろゲームをしていて勝ったり負けたりするのに、どうしてトマフォーク投げだけあの子はムキになるの? インディアンにとってトマフォーク投げはほかのゲームと違って特別なのだ。だからトマフォーク投げ大会ではわざと負けなさい。でもパパ、ぼく、的に当たっちゃうんだよ。では的を外したところを狙えばいい。
 この「外したところを狙えばいい」が印象に残っているのだ。なぜだろう。
 もう一つ、今度はマンガの赤胴鈴之助で、赤胴が他流試合をしてしまって千葉周作から破門される。もう一度試合があるが、赤胴は迷いがある、千葉先生に教えを請いたいが破門されている身で会うことができない。その時友だちがアドバイスしてくれる。先生の部屋の外から声をかけて旅の者ですが教えて下さいと言えば、先生は障子を閉めたままで教えてくれるだろう。そしてその通りになった。
 千葉周作も声で赤胴だと分かっている。しかし顔を見たわけではないので、知らなかったと他の門弟に言い訳ができる。この時、大人の建前を知ったのだった。