石川雷太と頭蓋骨のインスタレーション〜死体写真

 石川雷太というインスタレーションの作家がいる。初めて見たのは銀座のギャラリィKだった。屠殺場で屠殺されたばかりの牛の頭蓋骨6個をギャラリーに並べ、その眉間に五寸釘を打ち込んである。頭蓋骨の前にはアルファベットのイニシャル、K. HとかS. Gとかのプレートが置いてある。背後の壁にスローガンが掲げてあり、そこには「われわれは人を殺す権利がある」と書かれている。
 画廊の宇留野さんの解説によれば、イニシャルは小菅の刑務所に収容されている死刑囚のそれだという。
 死刑というのはわれわれが彼らを殺すことなのだ。殺すとは眉間に五寸釘を打ち込むことと変わらないことなのだ。死刑の実体が目前に見えたと思った。良いインスタレーションだった。
 しばらくして石川雷太さんから次の個展の案内が来た。池尻大橋あたりのNGギャラリーという画廊で、行ってみるとそこは死体専門の画廊だった。高円寺には死体専門のレンタルビデオ屋があるという。カメラマンが世界の戦場へ行って死体を撮っているそうだ。
 翌年の正月にNGギャラリーから年賀状が届いた。死体写真をコラージュしたものだった。娘が嫌がったのだった。この画廊、もうとうに閉鎖したようだが。