沖田瑞穂『世界の神々100』を読む

 沖田瑞穂『世界の神々100』(ちくま新書)を読む。著者はインド神話、比較神話が専門のようで、神話に関する多くの著書がある。

 本書は全部で7つの章があり、「主神」、「戦神・英雄神」、「豊穣神」、「女神」、「技巧神・医神」、「トリックスター」、「死神」となっている。そしてそれぞれ五十音順に神が紹介されている。「主神」ではアフラ・マズダー、アマテラス、ヴァルナ、ヴィシュヌのように18柱の神が、「女神」ではアメノウズメ、イシス、イワナガヒメ、ウマイ、カーリー、ガンガーのように16柱の神が取り上げられている。ほぼ2~4ページくらいの分量だ。

 それぞれ五十音順なので、相互に関連はない。あたかもカタログのようだ。日本神話とかインド神話とかギリシア神話とかの神々がばらばらに各カテゴリーの章に振り分けられている。もともと各国の神話は体系的になっている。それがばらばらのカタログのような編集で、神々の関係を理解するのが簡単ではない。

 本来神話は体系の中で語るのが妥当なはずだが、おそらくインド神話、日本神話、エジプト神話のように括ると、既存の類書と差別化できなってしまう。それを避けたのではないか。

 そうして編集された神々のカタログは、確かに類書がないユニークなものになったが、読んで面白く有効なものにはならなかった。あるいは本書は通読する本ではなく、興味のある神を辞書のように引くものとして企画されたのだろうか。