中国新聞SELECTに紹介された山本弘展

 中国新聞SELECTに紹介された、昨年秋の東御市立梅野記念絵画館の特別展「All is vanity. 虚無と孤独の画家―山本弘の芸術」の展評がとても良かった(2023年11月14日)。筆者は中国新聞社の道面雅量氏。

 その後半部分を引用する。

 

 展示は油彩65点と、確かなデッサン力を証す素描類。油彩の多くは形をつかみづらいほど激しいタッチが躍るが、いずれも題材のある具象画だ。「河」は、自宅から見下ろせる天竜川を描いた。「俺は白の天才だ」と自負したという、厚塗りの白が美しい。

 「湘五歳」は、まな娘がモデル。山本は酒で乱れて妻や娘を家から追い出したり、2人の持ち物を燃やしたりもしたが、絵筆を握る時はしらふだったという。家族を描いた絵は哀切の趣が深い。

 生前は理解者の限られた画業に90年代初め、脚光が当たる。遺作を見た美術評論家針生一郎(1925-2010)の論考が大きなきっかけになった。没後10年余りを経て、鑑賞者にこびない孤高ぶりが評価を得た。

 しかしそれは、やはり万人への「分かりやすさ」とは遠い画業ということに他ならない。その絵が何を語っているのか、己の感性を研ぎ澄まし、1対1で向き合うー。絵を描くことでしか生きようがなかったと思える山本弘という画家の絵は、そうした鑑賞態度をほとんど強要する。本来あるべき絵との向き合い方を。

 

 特に末尾の一文、「その絵が何を語っているのか、己の感性を研ぎ澄まし、1対1で向き合うー。絵を描くことでしか生きようがなかったと思える山本弘という画家の絵は、そうした鑑賞態度をほとんど強要する。本来あるべき絵との向き合い方を」。山本弘の絵を鑑賞するための鑑賞者の態度をこう言い切ってくれた。私も教えられたのだった。