山本弘の作品解説(37)「落陽」


 山本弘「落陽」油彩、F12号(60.6cm×50.0cm)

 制作年取り敢えず不明。落陽とは落日の意。右から左下へ続く茶色の太い線が飯田市民なら誰でも即分かる風越山の稜線を示している。秋の陽だろうか、風越山の向こうに日が沈んでいく。山本弘が住んでいた旧上郷町から落日はまさにこのように見えるのだ。この絵1枚で山本の才能は誰にでも納得されるだろう。
 落日をこんなに美しく描いた画家がいただろうか。山本はいつも、沈みゆくもの、崩れゆくもの、孤独なもの、目立たない地味なもの、を美しく描いた。それはアル中でヨレヨレの姿で街をさすらう自分が本当は美しいのだと言っているかのようだ。そして、そのことは全く正しかったが。


(M. M. Polo 所蔵)