国立新美術館の大巻伸嗣展を見る

 東京六本木の国立新美術館で大巻伸嗣展が開かれている(12月25日まで)。大巻伸嗣は1971年岐阜県生まれ、1995年東京芸術大学美術学部彫刻科卒業、1997年同大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。


 最初の部屋に大きな壺状の立体が設置されている。巨大な刺繍のような造形はステンレスとLEDライトで作られていて、中から光が射している。これは原子力が引き起こした未曾有の人災に、核分裂反応の爆発的なエネルギーの象徴とも言える強烈な光で応答しているという。そしてエネルギーに過度に依存している今日の社会を批判しているという。(私には意味不明)


 奥の大きな部屋(24×41×8m)には暗い空間に白い光が波打っている。大きなポリエステルの布にファンで風が送られ、幻想的な空間を作っている。これも何か分らない存在の気配のようなイメージを劇場的な空間に託したものだという。これまた「外的世界と人間の内面世界が浸透したような独自の空間が創出されている」と解説されている。

 何事も日常的なものを巨大化すると別の意味を帯びてくる。巨大化することによって新たな意味が生じてくる。大巻伸嗣の作品がまさにそうだろう。ただ、巨大化したこと以上の積極的な意味が感じられない。なんだか舞台美術の背景や広告のディスプレイ程度にしか感じられない。

 まあ、無料だからあまり文句を言ってはいけないのかもしれないが。

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大巻伸嗣展「真空のゆらぎ」

2023年11月1日(水)-12月25日(月)

10:00-18:00(金曜・土曜は20:00まで)火曜日休館

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国立新美術館

東京都港区六本木7-22-2

電話050-5541-8600(ハローダイヤル)

https://www.nact.jp