トキ・アートスペースの高橋理加展を見る

 東京外苑前のトキ・アートスペースで高橋理加展「パンとサーカスを…」が開かれている(2月19日まで)。高橋は1963年東京生まれ、多摩美術大学絵画科を卒業している。トキ・アートスペースでの個展は3年ぶりになる。画廊のホームページに高橋の言葉が掲載されている。

 

滅びの予兆あるいは人々の黄昏

 

牛乳パックの再生紙によるヒトガタを使ったインスタレーションを行なってきた。ヒトガタは多くは実物大の子供や赤ん坊の姿をしているが、それらの意味するところは我々現代人(大人)の世界である。私にとって、人間は常に謎であり、恐怖であり、逃れられない対象なのだ。軽く、薄っぺらく、空虚なヒトガタが演じる空間で、現代あるいは、近未来の我々の姿を垣間見ることができると考えている。

今回の展示のタイトルとした「パンとサーカス~Panem Et Circenses~」(食糧と娯楽)という言葉は、古代ローマ市民がこの二つを国家から与えられて満足し、政治に無関心になったさまを、詩人ユウェナリスが著した「風刺詩集」の中の表現。

『民衆は、投票権を失って以来、国政に対する関心を失って久しい。指揮権、懲罰権、ローマ軍団、かつては全てを与えていたが、今や自らそれを止め、ただ二つのものを不安げに求めている―すなわちパンと見世物を...』

穏な空気が包み込む中、様々な危険に目をつぶり、私たちは日々の暮らしを演じている。作品でさえも、すでに「見世物」となり果てているかもしれない。多くの人がパンとサーカス(見世物)を求めるのであれば、その中に少々のクリティカルエッセンスを潜ませよう。一期は夢とただ狂うのも良し、古代ローマの轍を踏まぬよう、立ち止まって考えてみるのもまた良し。

 

未来の廃墟

少しの疑い

暗黒憲法



 ギャラリー内には牛乳パックの再生紙で作られた「ヒトガタ」=子供たちの立体像が展示されている。子供たちは綱渡りをしたり、ブランコに乗ったりして遊んでいるが、どこか危なっかしい。よく見ると子供たちは皆目隠しをしている。これでは危険も見えないだろう。大きな蜘蛛の巣が作られていて、網には蝶が捕らえられている。

 高橋のインスタレーションはいつもこの社会が今も戦争へと傾斜しつつあることを懸念し、それに対する厳しい批判を表現している。

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高橋理加展「パンとサーカスを…」

2023年2月7日(火)-2月19日(月)

12:00-19:00(最終日17:00まで)2/13は休み

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トキ・アートスペース

東京都渋谷区神宮前3-42-5 サイオンビル1F

電話03-3479-0332

http://tokiart.life.coocan.jp/

東京メトロ銀座線外苑前駅3番出口より徒歩約5分