若桑みどり『イメージを読む』を読む

 若桑みどり『イメージを読む』(ちくまプリマ―ブックス)を読む。副題が「美術史入門」。1991年に北海道大学で5日間の集中講義を行った。その講義を元に仕上げたのがこの本だった。

 取り上げた作品は4点。ミケランジェロシスティーナ礼拝堂の天井画、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」、デューラーの「メレンコリアI」、ジョルジョーネの「テンペスタ(嵐)」、これらについて実に詳しい解説が加えられる。知らないことばかりで驚いた。イメージの中に隠された意味について深いところまで教えてくれる。

 「モナ・リザ」について、

 

 この女の人が笑っているのは「聖アンナ」の笑いであって、あなた方は何も知らない、私が知っているのは本当の真実だ。この世は確実に水か火によって滅びる。それは自らの運命によって滅びる。四元素の必然の運命によって地球は動き、そして絶え間なく老いていき、やがて終末をむかえる。これはすべての人間の運命であると同時に地球の運命でもある。つまりすべてを知るものの笑いであるというふうに、私はフマガッリやクラークとユイグの説を総合して思います。

 

 デューラーの「メレンコリアI」は謎だらけの作品だ。キーファーも画面中の不思議な立体を鉛で作っていた。瀬木慎一による新説を講演で聞いたことがあった。

 ジョルジョーネの「テンペスト」も不思議な作品だ。印象派以前は作品に意味を込めていた。印象派は意味を捨ててあるがままの自然を写し、モダニズムはただ造形の美のみを追求した。絵は本来何か意味を描いたものだったことを忘れがちだった。そのことに気付かせてもらった。

デューラー「メレンコリアI」

ジョルジョーネ「テンペスタ(嵐)」