東京神宮前のTAKU SOMETANIギャラリーでみょうじなまえ個展「Some Fairy Tales」が開かれている(4月24日まで)。みょうじは2019年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業、2020年にTAKU SOMETANIギャラリーで初個展をしている。
ギャラリーのホームページから、
約2年ぶりの個展となる「Some Fairy Tales」では、H.イプセンの戯曲「人形の家」と作者の母にまつわる記憶を元に作られた新作インスタレーション作品を公開します。
- 作品解説:
ビデオインスタレーション作品「人形の家」は作者の母にまつわる記憶と、イプセンの同名の戯曲「人形の家」などを元に作られた作品で、主人公である「着ぐるみ人形」を通して紡ぎ出された物語をひとつの舞台として表現しています。
「着ぐるみ」とは人体着用ぬいぐるみの略称であり、その名前の通り、人形と被服というふたつの性質を備えた装いです。
作中で使用される衣装や小道具は各々に課せられた「役割」や「演技」などを表しており、これらを身に着けた登場人物は、他者から押し付けられた主体、まさに「人形」として振る舞うことを強いられています。
ある物語から別の物語へと行き交うように、人は誰もが日々を過ごす上でその相手や場面、役柄、衣装を様々に替えながら他者と物語を共有して生きています。
それは自分が誰かの友人であること、伴侶であること、師であること、親であるということです。
Personという語の第一の意味が「仮面」であるのは単なる歴史的偶然ではなく、私達には属するコミュニティの数だけ社会的自己があり、日々役割という名の衣服や仮面を纏いながら自己を築き合い、その舞台の上で生きているという事の証でしょう。
そして何らかの共同体の一員として他者と共存しながら社会を生きる以上、私達はそれぞれの役割を完全に廃することはできず、肉体そのものに深く根付いた演技とラディカルな距離を置くこともできません。
人形から抜け出た主人公は、果たして「本当の自分」を見つける事ができるのでしょうか。
ギャラリーには着ぐるみをつけて様々なパフォーマンスをしている映像作品や、「人形の家」の立体作品、映像で使われた着ぐるみ、小道具、フィギュアなどが展示されている。一部の映像はいつものみょうじ作品らしく過激だ。「私達はそれぞれの役割を完全に廃することはできず、肉体そのものに深く根付いた演技とラディカルな距離を置くこともできません」と述べるとおり、ノラのように「真の」自分を見出すことを探っているようだ。しかし役割や演技を脱ぎ捨てたとき、皮をむき切った玉葱のように何も残らないという恐れはないのだろうか。玉葱の実体は皮かもしれないという可能性はないのだろうか。みょうじは個展を通じて己のアイデンティティーを繰返し探っている。
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みょうじなまえ個展「Some Fairy Tales」
2022年4月2日(土)―4月24日(日)
13:00―19:00、月・火曜休廊
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TAKU SOMETANI ギャラリー
東京都渋谷区神宮前2-10-1 サンデシカビル1階
電話050-5532-6058